なぜ人はバラが好きなのか

人がバラを好むのは、
バラが、私たちの睡眠中に、
私たちの幼児期の最初の思い出を
受け取ってくれるからなのです。
そのことをしらなくても、そうなのです。

生命43頁から
28.(1923年11月25日)
『ルドルフ・シュタイナー
遺された黒板絵』
ワタリウム美術館 監修
高橋 巌 訳
筑摩書房

 この黒板絵の「なぜ人はバラが好きなのか」を読んだ時、(やっぱり、そうなんだね)と私は納得した。バラが好き!なんてあまりにオーソドックスな感じがしたから、バラが好きにならないようにしていた。だってたいがいみんな、バラが好きで、薔薇柄のカバンや薔薇柄のテーブルクロス、コップ、絨毯、カーテン、化粧ポーチやスカートなどの洋服だって着ているのだ。だから、なんだかわからないのだけど、私はそういう気持ちでバラを好きになってはいけないという気がしていた。そういう気持ちってどんな?と聞かれると答えるのに困るのだけど。大げさにいうと、バラが好きになりそうな気持ちを抑えて生きてきた時もある。

 ずいぶん前、バラが、私にはとても手が届かない感じがしていた。私にはバラが気取った貴婦人のように見えたし、ツンと澄ましたお姫様のようにも感じた。または、そう簡単には打ち解けて話なんかしない有閑マダムのようにも感じていた。

 いつ、そんな頑なな私の心を溶かしてくれたのだろうか。

 それは、ある友人の話を聞いてからだ。友人Yさんは、もうバラを始めて3年目と言っておられた。そしてある日、Yさんのお庭をお邪魔した時、バラを始めた経緯を話して下さったのだ。その当時、Yさんは自宅でお父様の介護していたそうである。

 その長くなりそうな介護生活を始める時、自分が自宅でできる趣味を見つけようとしたのだそうだ。彼女はスポーツウーマンだったそうだ。スポーツならなんでもこなせる女性だ。だから、自宅にこもりがちになるであろう介護生活で、自分が明るく楽しく暮らしていけるようにと、自宅でできる趣味を見つけようと思ったのだそうだ。考えた結果、薔薇を育てることを考えたそうである。この話を聞いた時、さすがだと思った。

やっぱり、これだけの薔薇園を作っていける人は違う。動機が美しいし志が高い。そして、こんな素晴らしい人と知り合ったことが嬉しかった。 Aさんは、私に薔薇を育ててみることを勧めてくれた。「私ができたんだから誰でもできるのよ」と話すのだけど、私にはとても信じられなかった。「あらそう、そう言って下さるのはとっても嬉しいのだけど、今まで、園芸をしたことがないの。せいぜい実家の草むしりくらいなのよ。薔薇は難しいって聞くでしょ。とても私には無理だと思うわ。」と私。でもふっとベルサイユ宮殿の庭で見た薔薇園が浮かんできてしまった。満開に咲く薔薇たち。その周りを踊る貴族たち。(何故か貴族と見られる女性と男性たちが優雅に踊っているのだ。もちろん、私の得意な妄想である)

この情景が浮かんでしまったらもう、私はすっかり薔薇の世界へと誘われてしまった。薔薇薔薇薔薇薔薇薔薇、美しい薔薇たちがきれいな声で歌っている。甘い香りを放ちながらね。 


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