シュタイナーの死者の書について(2)

  • 死後のライフサイクルについては、『神智学』『神秘学概論』に詳しく書かれていますが、上昇の天井に到達した後の下降の諸相については、あまり説明がなされていません。ともあれ、真夜中時と呼ばれる頂点に到達すると、理想状態の偉大な大きな人間像を目の前にし、その状態にまで辿り着きたいという強い思いが、再び地上界に生まれてさらなる自己成長をしたいという願いとなって、再誕生へと意識を向けることになると言われています。この下降の段階において、今までの何回もの輪廻転生において、知り合った全ての人々とともに、また地上では目にできない天使の位階の霊的存在達とともに、協力しあって、自分の体全体のとっても大きな肉体の元となる部分を精密に作り上げる作業をするとされています。この時、素晴らしい理想的な共同作業をする経験をするというのです(この時の記憶は地上には持ち込めないのですが)。
  • 平均的には、1000年の間に、500年で一回男あるいは女として、次の500年で女あるいは男として地上生活を体験し、二つの性を体験すると言われています。今まで何回も輪廻転生を繰り返してきているのですが、その時の体験を全て天上界で再体験するのだそうです。己の生き様を知った上で、次の人生をどう生きるかを決めるのです。その自分の決めた人生を歩むのに一番ふさわしい環境を整えてくれると思われる親を探し、選んで生まれてくると言われています。
  • この体験を天上界でしている間に、楽しかったことも多く体験することになります。その時の体験をどのように受け止めるかによって、二つの道に別れるというのです。その箇所を引用します。

 『シュタイナーの死者の書』高橋巌訳、筑摩学芸文庫 の第六巻 197頁8行目より

「そもそも私たちは、喜んだり、満足感を味わったりすることによって、宇宙生活にお

ける債務者となるのです。もしも適当な時期に、過去の満足感や喜びを人生のために価値のあるものに転化させる能力を創造しようと決心しないならば、満足や喜びの余波の中で窒息させられてしまうでしょう。」

4)人生の目的は、理想の人間像に近づくことなのですね。人生楽しくてもいいのですが、その体験を自己成長の種として変容させないと、正しい人生航路を踏み外してしまう誘惑にさらされるという警告がなされているわけです。

5)地上世界においても天上世界においても、肉体のあるなしの違いはありますが、理想の人間像に近づけるようなシステムが精妙に準備されているということなのですね。神々の助け無くして、私たちは、1日たりとも生きていけないのです。神々に助けてもらっていることに気づかず、自分の力だけで生きていると勘違いする時、エゴイズムと悪の誘惑に乗ってしまうことになるというのです。

6)これは100年以上前のシュタイナーの発言なので、今の私たちは、今の世界の現実、日本の現実を体験しながら、それぞれの人が自分で考えるための材料にすぎませんので、ご自分の感覚、感性、感情、良心、創造的思考をはたらかせてご自分の人生を歩んで欲しく思います。私も、残された地上での生活を、より良い生活にするように、日々工夫したいと感じています。

以上:文責:今井重孝

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